東麗酒伊織染(南通)

ファクトリーマネジメント賞

主要事業 :
合成繊維織編物の製布・染色加工・縫製及び販売
設  立 :
1994年8月
従業員数 :
1,723名
所 在 地 :
中国江蘇省南通市経済技術開発区新開南路58号
代 表 者 :
秦 兆瓊 氏

総合所見

東麗酒伊織染(南通)有限公司(TSD)は、1994年に設立(操業開始は1996年)され、合成繊維織編物の製布・染色加工・縫製及び販売の事業を行っており、中国内外のアパレルメーカーに商品を供給している。昨今では、自動車用エアバッグやアパレル直販企業向けなど、製品品目や販売チャネルも拡大している。
活動の特徴としては、ナショナルスタッフ・従業員の総合力を生かし、汎用・低価格品主体の製造・販売事業を高付加価値・高価格品主体の事業へと変貌させ、大きな成長を成し遂げた。工場改革・競争力強化が全社を挙げて取り組まれ、安全管理向上・人材育成・モチベーション向上・設備安定化活動などの諸活動を推進するに当たり、仕組みとマネジメントスタイルが構築・確立され、継続的に、大きな効果を上げている。具体的には以下の5つが評価された。

1.ナショナルスタッフの意識改革を目指し、「自分たちの会社」と思わせる企業風土の醸成に取り組み、そこでは管理職層の意識革命を目的としたコミュニケーション良化のために、多岐にわたって工夫ある施策が打たれていること。

2.弛まぬ人材育成やモチベーション向上策を丹念に行っていることである。例えば、毎日の業績に対して点数付けをおこなう評価制度などモチベーションの向上策や、収益面で苦しい時期でも採用と人材育成を続け、労使間の信頼を築きあげてきたところ、結果、工場幹部のほとんどがナショナルスタッフで構成され日々のマネジメントがなされていることは大きな成果と言える。

3.安心して生産できる工場づくりを愚直に取り組んでいることである。具体的には過去の工場で得た災害教訓から、安全対策活動のみならず従業員の家族まで視野に入れた安全意識向上施策を工夫するなど、広範で工夫ある施策を推進しており、成果も出ている。

4.生産におけるデジタル化やIoT化は時流であるが、その運用や活用にあたっては、現業社員も含めて、データ活用・解析を行えるような教育を推進している。その結果、多くの製造職が品質面や生産性面でデータを活用して科学的な改善ができるようになり、一段高い改善を推進していること。

5.工場マネジメントにおいては、ICT活用により各ラインの状況や異常の見える化が進められており、タイムリーにPDCAを回している。また、その業績を向上するためにSCRUM活動が行われており、毎日職場単位で課題や目標、スケジュール、進捗状況、テーマ推進上の課題などを一人ひとりが付箋紙などで見える化・共有化、そして討議に励み、その結果一人ひとりが強くなり職場も改善推進されている。言わば、ICTを活用しつつ人の知恵を活用するマネジメントの高度化が図られている。
 
これらに取り組む過程において工場マネジメント改革としての運営方法、意識改革、また評価制度の工夫、さらに経営軸を利益や顧客重視へ転換させるなど時流にあわせた変革を行ってきた。この結果、利益を生み出す体質も持った工場へと育て上げ、持続成長の軌道に乗せてきたと考えられる。加えて製販連携とマスカスタマイゼーションの工夫により、商品&製造方法開発を行ない、工場プラスアルファの価値提供を行っていることは評価できる。