梶文彦の「ニッポンものづくり紀行」 その42|木材は生えているままに使う
これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。
木材は生えているままに使う
ものづくりの世界では、剛性とかレジリエンスとかが重視され、設備はしっかり安定的に稼働することが求められます。
不安定の要因は、素材そのものの性質を別とすれば基本的には結合部にありますから、できるだけ結合部を少なくして一体化するというのが、精度を上げ剛性を高める一つの方法です。
法隆寺に使われている木材は、一つとして同じ寸法のものはないそうで、そのため、建物は結合部が非常に多くあります。しかも、組み合わせる木材がそれぞれ木の癖を生かして形取りしているために、ひとつひとつ形が違います。
組み立てにあたっては、それ等の部材を現場合わせで組み合わせていくので、出来上がった建造物は結合部だらけ。その意味では剛性は評価のしようがないそうですが、そんな状態にもかかわらず、1300年間、どんな地震にも耐えて持ち続けてきました。
「結合具がたくさんあることで、揺れや振動をその結合部がバッファになって受け、力を分散させて、振動を弱める。不揃いの素材を使えば、どんな振動でもそれぞれの部材が個性を発揮して総組の強さが生まれる」と西岡棟梁の弟子である小川三夫棟梁は言います。
固めてしまうのではなく、遊びを作ることで逆に壊れることを防ぐ、現代の工学常識には収まらない発想ですね。
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梶文彦氏執筆による、コラム「ニッポンものづくり紀行」です。梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています!
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