梶文彦の「ニッポンものづくり紀行」 その79|よこはま道――3kmの道路工事をわずか3か月で完了

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

よこはま道――3kmの道路工事をわずか3か月で完了

CIMG1181野毛擁壁

芝生村から開港場に向う道の終着点は、吉田橋、は、いまのJRの関内駅である。岡野から平沼あたりは湿地だったために、整備して新田間橋(新田間川)、平沼橋(帷子川)、石崎橋(石崎川)の3つの橋を渡して戸部村までつなげた。

さらに、南にある伊勢山を開いて切り通しを作り、野毛浦と吉田新田の間を野毛橋(都橋:大岡川)でつなぎ、さらに太田橋(吉田橋)を建設して開港場につなげた。

芝生から吉田橋まで1里弱(約3km)。開港をまじかに控えて、わずか3か月の突貫工事であった。ルートは沼地である。建設重機はない。

3kmの難しい道路工事を、人力だけで3か月で完了するそのプロジェクト推進力は、世界的に見ても、類がないレベルの高さと思う。

これだけの期間で資材を調達し、計画し、実施する、江戸末期の日本人の土木工事とプロジェクト推進能力の高さは、驚くほどだ。

開港場に店を構えた商人たちは、生糸ブームに乗って事業が大きくなると、「別荘」と称して私宅を近くに造った。

豪商たちの人気の地が野毛。明治の初めに建てられた横浜の豪商・平沼専蔵別荘の擁壁が野毛交差点に今でも残っている。

六角に切った石を積んだ亀甲積で、関東大震災などにも崩れずに今に伝わっている、美しい石組みの技術は見事だ。

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梶文彦氏執筆による、コラム「ニッポンものづくり紀行」です。梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています!
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