梶文彦の「ニッポンものづくり紀行」 その35|<竹中大工道具館>(4) 後世の大工への信頼

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

<竹中大工道具館>(4) 後世の大工への信頼

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これは、直角の丸太3本の継ぎ手。くさびを入れて、頭を切ってしまえば、もう何がどうなっているのかわかりません。
数寄屋造りの特徴は、丸太の素材などを、あるがままに活かして使うところにあります。必要な加工に合わせてノコギリ、カンナ、ノミを最適な状態に仕上げ、それらを縦横に使って精緻な部材を丸太の凹凸にそって隙間なく仕上げ、組み付ける、根気のいるていないな仕事が必要です。

こうしたつなぎは、分解・修理するにあたって、再利用できるようにという発想で生まれたものです。当時、木材は高価とはいえ、いまと比べればずっと豊富にあった時代です。そんな時代でも再利用を心掛ける、大工の精神の豊かさを学びたいものです。

素材は寿命がありますから、建築物につかえば修理が必要です。建設にあたっては、高度な技で作ると、後世の工人が理解できない可能性があるから、後世の人たちにもわかるような細工を心掛けなくてはいけない、と主張する専門家がいますが、宮大工西岡常一の弟子の小川三夫棟梁は、どんな難しい細工を作ろうと、後世の大工が研究すればその細工の意味と仕組みは明らかにすることができる。だから、そんな気遣いは無用だと言います。

自分達と同じように、後世の大工を信じなさい・・・ということでしょうか。プロとしての誇りかもしれません。
遠慮はいりません。どんどん知恵を絞りましょう。

ぜひ、後世の大工さんたちが開けてみたら、ウームこれはすごい、かなわない、と唸るくらいの、高度な技を伝えたいものです。

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梶文彦氏執筆による、コラム「ニッポンものづくり紀行」です。梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています!
地球の歩き方「Look Back Japan –ものづくり強国日本の原点を見に行く」連載中!