梶文彦の「ニッポンものづくり紀行」 その7|プロジェクト管理力
これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。
プロジェクト管理力
富岡製糸場を作るとしたらどのくらいの期間が必要か、いま算定しても、計画から完成まで数年はかかるでしょう。
ところが、計画から完成までなんとわずか2年4か月、設計図が完成してからわずか1年5か月で作り上げているのです。
輸送トラックも、建設重機もない時代です。スケジュールを見ると、
1870年3月 フランス人で首長となるブリューナと仮契約
10月 正式契約
11月 バスチャンに設計依頼
1871年2月 富岡製糸場の工場設計図が完成
ここから調達が始まり、
1871年3月1日 工事着工
1872年7月 主要工事終了
・・・という具合で、工期はわずか1年4か月です。恐るべきスピードではありませんか。
建設重機や自動車という輸送手段がない時代に、敷地面積55,391.42㎡の敷地に、140×15×12mの赤レンガの倉庫2棟、140×12×12mの繰糸場、それに事務棟や宿舎を立て、輸入製糸機を横浜から運び込んでいます。
必要なレンガ・瓦170万枚を手探りで作り、工場を建設し、設備を搬入して稼働できるようにするまで、わずかに16か月なのです。
こんな複雑な工場の建設を、未経験の日本人が短期間で作り上げてしまう、このプロジェクト管理力を何と評価するべきでしょうか。
完成は明治5年、つい数年前まで、勤王×佐幕と刀を振り回していた侍たちに、こんな力があったとは。改めて先人の持つ力に感動さえ覚えます。
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梶文彦氏執筆による、コラム「ニッポンものづくり紀行」です。梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています!
地球の歩き方「Look Back Japan –ものづくり強国日本の原点を見に行く」連載中!